「 花であること 石原吉郎 」その3 |
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「お盆前が良いと思う。 今日も数名のお客が、中庭や蕎麦を写メール(カメラ付き携帯電話)でしきりに撮っていたよ。」と、知明が言った。 井上先生に書いてもらった「花であること」の紙の小さなしわが気になっていたが、表装屋に頼んで、しわを伸ばしてもらっていたら間に合わない。
しかし、店が少々バタバタしていて、昼間はできない。 おまけに、この猛暑だ。 ギャラリーの二階の座敷なんて、35度以上の室温だ。 「よっしゃ! やるぞ!」と決心するまでに、半日かかった。 優柔不断だが、決めたら短気だ。
と言っても、2mmの樹脂をハンドカッターで切断するのは、簡単なことではなかった。 もし失敗したら、1万円がパーだ。 失敗は許されない。 切断する線を用心深く書き込み、金尺(かなじゃく)を当てて、何度も同じ線に沿ってカッターを入れ、少しずつ切っていく。 下敷きにはゴムの平板をあてがい、そのゴムの面までカッターが貫通するまで、かなりの回数が必要だった。
額や身体から汗が吹き出る。 ヒーヒー言って、やっと切断が終わり、樹脂板の両面に貼ってある保護シールをはがし、額に落とし込み、その上から「花であること」を広げてのせ、裏板になるベニヤ板をかぶせて、いよいよ額に取り付けた。 その後、布製のガムテープでベニヤ板の周辺を密閉するように、額に固定し、最後に強力両面テープを上下左右の周辺に貼って完成。 完成した額を抱えてみると、かなりの重量だ。
それを知明と二人で、取り付け場所まで運び、取り付ける位置を確認した。 事前に測量して、取り付ける位置に紙テープを貼っていたので、後はスムーズな作業だ。 それでも、いざ、取り付け直前の両面テープのシールをはがした時に、緊張が走った。 もし、手元が狂って失敗したらどうしようか?・・・・・え〜い!、なるようになるか!
見事に、位置が決まって、後は必死で壁に押し付けて接着を促した。 作業が終わり、額をゆすってみてもびくともしない。 これで、ほぼ半永久的に大丈夫だ。
黒い柱に囲まれた白い壁に、柿渋の額、中には「花であること」・・・・・自己満足の世界とは言え、なかなかの雰囲気だ。 さあ! どんどん写メールしてね!! あるいは、心に刻んで帰ってね!!
これで、自分の40代の【墓碑銘】が完成した。 あとは、50代に向って突き進むしかない。 苦しんで作品を書いてくれた井上先生、額を作ってくれた苑田さん、詩を書いてくれた今は亡き石原吉郎先生、こんなどうしようもない小生を支えてくれている皆さん・・・・本当に有難うございました。
| 「 花であること 石原吉郎 」 | - | - | posted by 猪原金物店 主人
「 花であること 石原吉郎 」その3