猪原金物店・コラム明治10年に創業。九州で2番目に歴史の金物屋。
金物店の裏では喫茶店も営業しています。

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【店内風景】その2 21:23
本日は57回目の誕生日だった。 長女から短いメール「信ちゃん誕生日おめでとう〜 長生きしてね!」・・・  おい! 親をなめとんのか! 「お父様、本日はお誕生日おめでとうございます。 今後も日々健やかに幸せに過ごされる事を祈念いたします。」だろうが!   次女にいたっては電話で「お〜、オヤジ! 誕生日、オ・メ・デ・ト!」  ・・・・・・もうこの国はダメだ!
 
しかし、もっと衝撃的だったのは、夏休みで帰省中の三女がミスタードーナッツの箱を居間のテーブルに置いていたことである。 誕生日の祝いらしいが背筋が寒くなるのを覚えたのだった。 無償の愛、見返りを求めない愛、という 概念が三女にないことは過去の経験から分かっている。 で、すぐに食べずにしばらく様子を見ることにした。 撒き餌の可能性があるからだ。 自分の身は自分で守る、これが我が家の鉄則である。

小生が20歳の時、父親は50歳で亡くなった。 つまりオヤジより7年長生きしたことになる。 金物屋を継いで35年目になる。 紆余曲折いろいろあったが、今思えばアッという間だった。 こんな感じで残りを生きていって突然ある日、「あれ!? マジ、もう終わっちゃうの?」って臨終を迎えるんだろうなぁ・・・・  そうなってくると「今日一日」って、奇跡的でかけがえのない一瞬なのだから有効に使い大切に生きなければ、と思うのだが、ハハハハハ・・・・なかなかねぇ。 


上の写真は、二ヶ月前に店内に誕生したショーケース。 今風の合板製ではなく無垢材を使った職人によるレトロ風展示棚である。 「もてあまして捨てようと思っているけど、いりませんか?」とお客様から頂いたのである。 当店の日産サニートラックで引き取りに行ったが、無垢材なのでずっしりと重く、中庭からトラックまでの数十メートルの距離をヒーヒー言いながら運んだ。 ショーケースの中には、播州・三木(兵庫県)から送られてきた錬鉄と安来鋼青紙2号を重ね打ちした鍛造職人による刃物類を展示する事にした。 ケースが洋モノ、中身がコテコテの和モノ・・・  以下が説明カードの文。

            

                          (れん)(てつ)安来(やすき)(はがね)の芸術!

                         錬鉄とは150年以上(江戸)前の和鉄です。

                         現代の鉄より純度が高くサビに強い高級品

                         錬鉄に最高級の安来鋼・青紙2号を割込み、

                         鍛造本火造りの贅沢な逸品道具シリーズ。

                         播州・三木(兵庫県)の職人技による限定品。



下の写真が先方の自宅から搬出直前の写真。 「拭いても拭いてもカビが生えてくるし、使いこなせなかったのです。 引き取ってもらって助かりました。」と言ってくれたが、助かったのはこちらの方だった。  持ち帰り、雑巾でカビを拭き取ろうにもカビの層がかなり深く浸透しており苦戦した。 茶房のアルバイトのサヤちゃんが手伝ってくれて見事に拭き上げてくれた。

その後、屋外に搬出し当店で販売している【柿渋】を刷毛で塗り始めた。 乾いては塗り乾いては塗りを7回ほど繰り返す。 次第に深い色と光沢が出始め、ショーケースが生まれ変わる。 【柿渋】に含まれるタンニンの効果は驚異的である。 カビ止めはもちろん防腐、防虫、撥水効果も請け負ってくれる優れモノだ。 青柿を破砕して水と一緒に自然発酵させるだけでできるのだから、先人の知恵の凄さには脱帽である。




今年2月に東京ビッグサイトで開催された「国際ギフトショー」に行った際、数千の展示ブースを駆け足で見て周り、気になるブースの名刺受けに自分の名刺を投げ込んできたのだった。 果たして一番気になっていたブースの会社から後日連絡があった。 「是非、貴店に伺いたい。」という旨だった。

播州・三木(兵庫県)の株式会社・イトーの営業担当者が二人訪れた。 店内を観て周り、いろんな情報交換を済ませた後「これは我々より本社の橋本が来ないことにはラチがあきません。」と言い残して帰って行った。  橋本氏がどういう人物なのかは、後日の本人の来店で明らかになった。

国際ギフトショーで株式会社・イトーの開発商品を見た時の強烈なインパクトは、この人物によってプロデュースされていたのである。 数分の一にスケールダウンされた手打ち鍛造の道具達、消防の半纏(はんてん)や武道の胴着などの素材である日本伝統手芸の刺子(さしこ)を使ったパソコンケースや携帯電話ケースなど多くのアイテムがある。 粋でお洒落で日本伝統のこだわりも捨てないという切り口がたまらない。  以下は説明カードの文。 

      ぜいたくの極み!?・・・刺子(さしこ)

          「刺子(さしこ)」とは?・・・・日本手芸の一種で、布地に糸で

          幾何学模様などの図柄を刺繍で縫いこむ伝統技法です。

          強靭で保温性が高く、使い込むほどに深い味が出てきます。

          しかも本品は、二枚重ねの「二重刺子」という超豪華版です。




上の写真は日本古来の伝統デザインを使ったバンダナ。 【青海波】、【麻の葉】、【桜】、【鹿の子】、【鮫小紋】、【鳴門】、【変り縞】、【唐草】、【渦巻】、【絣(かすり)】の10種類のデザインに、色違いのカラーバリエーションが加わって、全部で28種類である。 純綿100%の国産品で、吸汗、速乾に優れているので外国人にも人気がある。 980円(税込)というリーズナブルな価格も手伝ってよく売れている。

下の写真は、一ヶ月前の缶切りの注文品を取りに来て、【鳴門】デザインのバンダナを試着するマクスウェル氏。 島原で英会話を教えているのだが、夏休みを利用してしばらくインドネシアを旅して来たという。 そこへ偶然、居候の三女が来たので、「オマエ、大学では英語専攻だったなぁ、授業も英語しか使わないそうじゃないか、丁度いい機会だ、マクスウェルさんとなんか話してみなさい」と言うと、「エ〜!・・・・・」とか言ってモジモジしている。

その後、チョロチョロ話しては沈黙し、父親から促されてはまたチョロチョロ・・・・  マクスウェル氏が帰った後で、「オマエ、ちゃんと英語の勉強してるんか? もっとペラペラ話せると思ったのに情けない。」と叱咤すると、「話せるよ。」と三女が反論。 「じゃあ、なぜマックスウェルと話せなかったんだ?」、「・・・・だって、マックスウェルはめちゃ【ハンサム】だもん・・・」、「!?・・・・・お、オマエさぁ、じゃあ、相手がハンサムじゃなかったら英語ペラペラだったワケ?」、「Of course!」 ・・・・絶対、この国は滅びる! もうダメだ!!




当店を訪れた商品開発担当の橋本氏は、三木市だけではなく全国の手道具を作る鍛冶屋など鍛造職人の未来を憂えていたという。 大手ハウスメーカーは工場でプレカットによる柱や梁などの既製品を建築現場に輸送し、大工はそれらをプラモデルのキットよろしく組み立てるだけで家が出来上がるシステムを構築した。 現場でも電動工具などが普及し、鑿(のみ)や鉋や鋸などの手道具を使わなくなった。 そうなってくると職人は手道具を買わなくなる。 需要がなくなれば供給側は廃業するしかない。 

世界最高水準の刃物を生み出してきた日本の伝統的鍛造技術。 とりわけその中心に位置する兵庫県三木市と新潟県三条市の道具職人たちに未来はあるのか? 伝統的職人文化や技術を、国家が守り継承しているドイツなどのマイスター制度がない日本において、一体誰がその役割を果たすのだろう。 市場経済の非情な掟の中で、いろんな試みがなされてきたが根本的な打開策はまだ見つかっていない。

橋本氏は鍛造技術による手道具がどうしたら売れるか?を考えてきたが、ひとつの切り口が《ミニチュア化》による【遊び心】であった。 鉋、鑿、小刀、鋸、鏝、庖丁など全てをスケールダウンして、実用性より「眺めて楽しむ要素」をプロデュースした。 しかも模型の玩具ではなく、すべてが火造り鍛造の本物である。

三木市内の鍛冶職人に頼んで回りましたが、門前払いです。 やっと7軒目の鍛冶屋が引き受けてくれました。 しかし先方の採算ベースに乗るための最低注文ロット数が厳しかった。 かなりの先行投資が必要になりました。 造った職人も単なる思いつきの気まぐれだろうと半信半疑でいましたから、完売してなくても次の注文を入れて本気にさせました。」と当時の事を語る橋本氏。 まるで 《 プロジェクトX 》 の世界である。

「やっと商品が売れ始め、自分の会社も先方の鍛冶屋も本気になってくれました。 蕎麦打ち道具セットや各種鎌セット、斧、鉈、庖丁セットなどバリエーションを増やしてきましたが、男性の顧客を想定していたはずが、買ってくれる客の7割はなんと女性。 これは意外でした。」  上と下の写真が当店で展示販売している橋本氏プロデュースの商品。 「うわぁ〜、なにこれ? 本物? え〜!ホントに切れるの? でも、か〜わいい!!」と、なるほど女性客の反応は上々である。




 上の写真は新潟県三条市から仕入れた精密アンビルと精密バイス。 写真中央の角付きアンビルは幅3センチ、横11センチ、高さ4.5センチで重量はわずか520グラムであるが、鋼鉄製なのでテーブルの上で精密な板金作業などができる。 鍛冶屋などが両手ハンマーを振り下ろして鍛造や板金に使用する重量100キログラム以上の角付きアンビルをミニチュア化したものである。 3万円ほどで売られているスイス製のレプリカであるが、機能、精度ともまったく遜色はない。  
                                    

                                貴方の机に是非一台!

                                                 【精密バイス精密アンビル

                                                                金属板曲げや針金曲げ、指輪の形成、

                                                               時計直し、ハンダ付けなど用途は無限。

                                               すべて鋼鉄製なので熱にもOK。

                                               ★    5機種 各2200円(税込)



風鈴はカキ氷と同じ夏の風物詩だから、9月いっぱいで店頭から姿を消すことになる。 風鈴を収納する時に暑かった今年の夏を思い出し、5月に箱から取り出して展示する時に寒かった冬を思い出す金物屋の店主。 南部(岩手県)産の風鈴は特に音が涼しい。 種類によって音色がまったく異なるが、それぞれを選ぶお客の感性が垣間見えて面白い。


雲仙市国見町在住の美術刀剣鑑定士・松井更生(さだお)氏が、また新たな刀剣を展示しに来店した。  今回は室町時代の【太刀(たち)】を、後の時代に短く磨り上げて【刀(かたな)】にしたもの。 

 
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店内風景・その1 17:39
【店内風景】シリーズをスタートさせることにした。 日本一マニアックな店を目指しているが最近は遅々として進まない。
しかし、美術刀剣鑑定士・松井更生(さだお)氏の協力を得て、マニアの極致である刀剣や短刀、槍などを常設展示することになった。  しかも、一ヶ月に1〜2度ほど松井氏が新しい刀剣類と交換に来るので飽きが来ない。



上の写真は、ガラス陳列の一部。  二代目・千代鶴貞秀の小刀や秋友義彦の《甲伏せ造り》の剣鉈や薬師寺修復に使用した白鷹幸伯の「千年の釘」など、マニアにとっては垂涎の品がボチボチ並ぶようになった。


上の写真は、松井氏が持参した新しい美術刀剣を展示している様子。  毎回、サッと来店して自分ですべて展示交換し、新しい刀剣の氏素性を小生みたいな素人にも優しく説明してサッと帰って行く。   ほとんどが室町時代から江戸中期までの古刀か新刀である。    最近、鎌倉時代の掘り出し物の立派な【太刀(たち)】が手に入ったということで持って来て見せてくれたがすぐに買い手がついた。  この不景気な時代なので、美術刀剣も《底値》である。  バブル期には数百万円もしたものが今では数十万円で手に入る。   もちろん、偽物ではなく鑑定書つきの本物がである。 
 




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