猪原金物店・コラム明治10年に創業。九州で2番目に歴史の金物屋

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【龍's collection in 速魚川】その11 18:46
 長崎県内で梅が咲き始めたという便りがあり、春はすぐそこまで来ているというのに底冷えの毎日である。  3ヵ月半振りのブログ更新・・・・   なんか新鮮!

有田の造形作家・大石順一氏が、完成した龍の造形 「PRAY・8」 を先週当店に持って来てくれた。
  2年前の一作目から観てきたが、これが8体目である。  今回のテーマは 【 回天 】。  それぞれの作品が秀作であるが、だんだん迫力が増し完成度が高まってきている気がする。 特に龍の頭部の表情が見る角度によって変化し、凛とした決意や優しげな問いかけや哲学的苦悩などが垣間見えたり、多面的でどこか人間的な妙味が出てきていると思えるのだ。 


 
大石氏と「龍の写真を撮りたいのですが、なかなかうまく撮れません。 一眼レフのカメラがあればいいのになぁ・・・」と店内で話していると、「川遊びの会」の才籐氏がフラッと顔を見せた(!?)。  「今日は休みで、猪原さんの前を通ったら大石さんの車があったので」  まさに【引き寄せの法則】が作用していた。

才藤氏は昨年、一眼レフのカメラを手に入れた。 「才籐さん、今日はカメラを車に積んでいますか?」 「もちろん。 なにか撮るものがあるのですか?」 「ヒッヒッヒッヒ・・・おおいにあるとですよ。」

「PRAY・8」を中庭に持って行き、才籐氏のカメラを借りてシャッターを押した。 龍の頭部の表情を撮りたかったのだ。 特に眼と口元をアップで。 眼の赤い瞳を囲む虹彩(こうさい)の吸い込まれるような鮮やかなブルーはヨーロッパの顔料を使っている。 自分みたいな素人は機械の高性能に頼るしかない。 ラッキーだった。 (才籐さん、いつも有難うございます!!) 

   「完璧」という言葉しか浮かばないうねりのフォルムと各部分の詳細なディテールを画像でどこまで表現できるかわからないが、なんとか伝えたいという気持ちは強まっていく。 頭部の皮膚も撫でつけず味わいのあるラフなタッチで仕上げてある。 


人間はなぜ太古から「龍」を描き造形してきたのだろうか?  人間にとって「龍」とは一体何なのだろうか?  ジブリ映画 【ゲド戦記】 の劇中歌に 『竜』 があり、手嶌葵の歌うその歌詞が強烈に心に残っている。

           昔々の その昔
       歴史が始まる 前のこと
       二つのものは 一つだった
       二つは同じ 一つだった

       持つこと欲した もの達は
       海と大地を 選んだが
       自由を欲した もの達は
       何も持たずに 飛び去った

       分かれてしまった 人と竜
       忘れてしまった 太古の記憶

       遠く遠くの 西の果て
       世界が終わる 最果てで
       翼を持った もの達は
       風のはざまに 生きている

       風を吸い込み 火を喰らい
       鋼の体は 風に乗る
       赤い瞳は 真を見つめ
       太古の言葉で 真を語る

       どんなものにも 囚われず
       どんなものにも おもねることなく

       それは気高く 慈悲深く
       そして残酷な 残酷な命
       人がなくした 太古の姿


 

上の写真は、大石氏が現在制作に取り掛かろうとしている「手びねり龍」のひながた(原型)である。(写真の下)  このひながたを基本にして、同じものを手びねりで一個一個作っていく予定。 まだ窯で焼く前の粘土状態なので優しく扱わないと欠ける恐れがある。 すでに釉薬(うわぐすり)が塗ってあるので、焼くと写真上の「PRAY・8」と同じ色になる。

造形作品「PRAY・8」は、一体の制作に数週間ほどかかるが、この「てびねり龍」は一体が1〜2日で制作できるので、予約しておけば窯焼きも含めて最短で2週間くらいで手に入る。 単価は35000円。 2年前に紹介した大石順一のてびねり干支シリーズの「てびねり龍」(18000円・手作り座布団とミニ屏風付き)とは、サイズも造作もかなり異なっている。 造形作品「PRAY」シリーズのミニチュア版と言ったほうがわかりやすい。  完成したら当店に数体ずつ常設展示し販売を開始する予定。 完成作が楽しみである。


上の写真は、大石氏が持参した樹齢160年の楠(くすのき)。  寸法は□31.5センチ×48センチ、重量40kg以上。 昨年の秋に、ある薬局の経営者から彫刻作品の依頼が大石氏にあり、材料の木をあちこちのルートで探したがなかなか良いものが見つからなかった。 ところがある縁で、東京藝術大学に木彫用の材木を納めている業者から木を手に入れる事ができるようになったのである。 

ちょうど京都から仏像の楠材の注文があり、運良く良質の楠材が見つかったので、いっしょに確保してもらったそうである。 大石氏が彫る作品は 『神農(しんのう)』である。 漢方を司る古代中国の神様で、頭に角があり髭を蓄え、あらゆる植物を噛み砕いてはその薬効を人間に教えるという。 

いよいよその制作が始まる。 4年前の当店の 『石の龍制作プロジェクト』 のように、メイキング記録を大石氏のイラスト日記や写真などを使ってこのコラムに紹介していく予定である。 注文は30cm四方の立方体なので、残った端材で待望の「弥勒菩薩」が彫られるかも知れない。  乞うご期待!! 
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【龍's collection in 速魚川】その10 18:16
12月1日(水)の午後4時頃、有田の大石氏が注文を受けていた土鍋や焙烙(ほうろく)と一緒に、「龍」の作品を持って来た(以下の写真)。  昨年12月から制作をスタートした龍の造形シリーズ「PRAY (祈り) 」の第7作目である。

数ヶ月前に注文を受けていたが、他の陶器類と異なり、このシリーズに関してはインスピレーションが湧くまで絶対に制作に取り掛からない。  陶芸家・大石順一は【料理店が勧める料理の栄える器】をテーマにして卓越した多くの器類を世に出してきたが、造形作家・大石順一は全く異なる世界の人物なのである。  
 
今回の「PRAY・7」は、テーマが「ありがとう」で、スタイルは「臥龍」である。 今にも動き出しそうな迫力は、まるで「龍」という動物が自然界に実在しているような錯覚を覚えるほどである。 「肩甲骨から骨盤までは空洞にしています。 龍が乗ってる岩場も空洞です。」と大石氏が説明した。

陶器と同じ工程で焼くので、分厚い粘土部分は乾燥しにくく、1300度の窯の中で水蒸気爆発する危険性がある。 龍の胴体の厚みは、芯部まで完全乾燥させるには時間がかかるし爆発のリスクも残る。  「胴体を空洞にするために、窯の中で燃焼して気化する芯材を入れて作ります。 一箇所小さな穴を作っておけば、そこから燃焼した気体が抜けて胴体内に空洞ができます。」  なるほど・・・・


いくら硬く乾燥した粘土とはいえ1300度の窯の中では溶岩、つまり溶ける一歩前の状態である。 頭をもたげた龍の頭部や宙にはね揚げた尻尾部は、その重量で次第に沈下し始める。  空洞部を多くして軽量化をはかる理由がそこにもあるのだ。 

龍の口の部分は実に緻密に作り込んである。 「牙や口髭を作る時は大変でしょうね」と言うと、「開いた状態で口の内部を作り、後で閉じさせます。 柔らかい粘土だから出来るんです。」と大石氏。 ひぇ〜! そこまでやるんだぁ〜!!


昨年、愛犬アンディーが亡くなって二日後、失意のどん底にあった大石氏に「龍を造りなさい」と言った福岡県宗像(むなかた)市在住の作家がいた。  彼女は「天女の舞」を舞う女性でもある。 大石氏は悲しみに耐えながら龍の造形を作り、年が明けた今年1月に当店で【龍's collection in 速魚川】と銘打った作品展を企画し、金属彫刻家・田邊朗氏と造形作家・吉田明子氏の同門3名で開催した。

このイベントが縁になり、田邊氏にとって大石氏の龍の造形を収納するオリジナルショーケースの制作、さらに高城歯科クリニックの《テマテック・アイコン》となる巨大ロボットサインの制作へとつながっていった。

宗像の女性作家は「龍を造りなさい」と言った後に「あなたは弥勒菩薩も造らなくてはならない」と付け加えたそうだ。  龍の造形が何体か出来た今年の春に「金粉とプラチナ粉を一瓶づつ持っています。 これらを使って近いうちに【金龍】と【銀龍】を造ろうと思っています。」と大石氏がポツリと言った。

その後、今年の秋に大石氏と共に長崎市のある人物のところに遊びに行った際、大石氏はその初対面の男性から「金龍を造りなさい。 そして弥勒菩薩も。」と唐突に言われた。 大石氏はビックリして言葉を失った。 横で聞いていた小生も鳥肌が立った。 

来年はこの「PRAY(祈り)」シリーズに、金色と銀色の龍が加わるだろう。 同時に、弥勒菩薩を彫るための木を大石氏は探し始めた。  カラクリ木工で木彫を経験した大石氏にとって、すでに準備はできている。 来年が楽しみである。



 
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【龍's collection in 速魚川】その9 14:49
昨日午後6時半に、有田の造形作家・大石順一氏と唐津の金属彫刻家・田邊朗氏が再び島原を来訪。    
例の大石氏の龍の造形が2体とも完成し、収めに来たのである。   龍の造形はこれで3作目と4作目になる。
下り龍の「祈り(PRAY・3)」と、『はじまり』をテーマにした静的な「祈り(PRAY・4)」である。   
誰がこのような展開を予想しただろうか?   大石順一という作家により我々の眼の前に次々と新しい姿かたちの龍達が現われてくる。   しかも見たことのない完璧な造形として・・・・
 




















 
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【龍's collection in 速魚川】その8 18:48
今年の1月10日から31日まで速魚川ギャラリーにて開催した3名の作家展【龍's collection in 速魚川】が多くの人の目にとまり、新しい展開につながっていった。    大石順一氏の作品「龍の造形・PRAY(祈り)1・2」を購入していただいた松下ひふ科の院長より、この作品を展示するケースを作って欲しいという依頼が、作品展に参加していた金属彫刻家・田邊朗氏にあった。  
 
早速、田邊氏はケースの設計にかかった。   大石作品とのコラボレーションである。   2月6日に展示ケースのスケッチが田邊氏より送られてきた。(下の写真)    大石作品との見事な調和が実現していた。    以下は、その時の田邊氏のコメントである。
 
龍のケースのスケッチが出来ましたのでお送りいたします。 お待たせして申し訳ありませんでした。 「祈り」を入れる匣として考えました。いかがでしょうか。 現在考えている仕様は下記の通りです。
材質は鉄製 仕上げは錆着けの後、錆止め処理の上 特殊ニス塗布  大きさは上り龍に合わせてあります。 幅最大42僉澑行き最大42僉濆發60僉淵▲丱Ε箸任后 天井部に10wダウンライト2個 扉は背面片開き 透明部材はアクリル3亳を使用するつもりです。 アクリルは透明度が硝子の約10倍あり極めて衝撃に強いためです。



3月8日(木)の夕方7時半に唐津の田邊氏と有田の大石氏の二人が島原に到着した。   待ちに待った瞬間だ。    すぐに松下院長の待つ松下ひふ科に移動し、設置作業にかかった。    ケースの各パーツが院内の待合室に搬入され、制作者の田邊氏によって組立作業が始まった。    上と下の3枚の連続写真は、ケースの上蓋の部分。    

龍の鱗(龍の場合は羽根という)を連想させる錆処理された丸い鉄のチップは、ケース2台分で合計3500枚だという(!?)。    このチップを1枚ずつ溶接していくという気の遠くなる作業が田邊氏によって施されている。   注意深く観察すると均等に配列されたように見える羽根は一枚一枚角度や表情が異なっており、まるで生き物のそれである。   


天板の錆の処理も、その豊かな表情と深い味わいに唸ってしまう。        鉄という素材を知り尽くした田邊氏にしかできない「錆の妙」が心憎いほど見事に表現されており、何度見ても見飽きることはない。


「斑鳩(いかるが)」という言葉がなぜか頭に浮かんだ。    この作品には時空を超えた何かがあると思えた。     
「久しぶりに《職人魂》に火がつきました」と彫刻家が笑った。    職人」と「芸術家」の境界線はどこにあるのだろうか?・・・・・・
今回も田邊氏の手のひらは鉄粉や火傷などで荒れており、制作時の鉄との格闘の激しさを物語っていた。  
大石氏の龍の造形とぎりぎりのところで拮抗しながらも見事に脇を固め調和を果たした作品、と言えるのではないだろうか。     「祈り」を入れる匣(はこ)として考えました。  
田邊氏の言葉の意味が伝わってくる。


鉄のフレームに保護紙の貼られたアクリル板の窓が取り付けられていく。    窓はフレーム上部の隙間から下にスライドさせてはめ込んでいくシステム。 


手伝いたいが、田邊氏のイメージに沿って組み立てられるので誰も手が出せない。   田邊氏の額には汗がにじんできている。   


やっと窓が取り付けられ、次第にケースの形に近づいてきた。    天板にはダウンライトの器具が一対セットされている。    このライトが大石氏の龍を照らすことになる。


いよいよ屋根部の上蓋がはめ込まれた。   前後左右、寸分の狂いもなく出来ているので、我々は田邊氏の作業をジッと見つめるだけである。     美しいだけでなく品格も漂っている。 


予定通り、松下ひふ科の待合室の出窓床板に基礎部を固定する。    位置決めにも細心の注意を払う。    位置が決定した段階で、木ネジを捻じ込んで基礎部が固定された。


完成された展示ケースの中に、作品が載る台が置かれた。   底にはマグネット(磁石)が付いており、多少の振動では動かないようにしてある。     いよいよである。   気持ちが高揚しているのがわかる。


大石氏の龍の作品の底部に両面テープを貼っている場面。     この後、ケースの中の台の上に作品が固定される。     二人の作品が合体する一番緊張するシーンである。   大石氏と田邊氏の呼吸が聞こえてきそうだ。  


 完成した!!    ライトを点ける・・・・    感無量・・・・・    「祈り(PRAY・2)」、昇り龍の眼がこちらを睨んでいる。   


 「祈り(PRAY・1)」は、着地しているポーズなので接地面が広く、安定している。     なにか凄い事になってきた。     まるで美術館か寺院、神宮の本殿にいるような錯覚をおぼえた。


 待合室に二頭の龍が並んでいる・・・・・     田邊氏のケースはこの空間に一種の緊張感と品格を醸し出し、それぞれの龍の持つ個性と「祈り」を際立たせている。    毎日多くの患者がいろんな想いでこの龍達を眼にすることだろう。              
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【龍's collection in 速魚川】その7 20:39
本日は大石順一氏プロデュースの【龍's collection in 速魚川】の最終日である。  今回も作品展を通して多くの出会いがあった。  速魚川関係者や来店客と3名の作家や作品はお互いに出会い、交流して影響を受け合うことになった。

それぞれの人生のそれぞれの物語、半世紀近くを《芸術》と向き合いながら生き抜いてきた群像を垣間見ることが出来た気がする。   さりげないほのぼのとした、しかしずっしりと重い作品展だった。

最後に、造形作家・吉田明子氏の作品を彼女のコメントと共に以下に紹介する。  吉田氏の作品は、以前にも書いたが当店に常設展示し販売する事になった。  彼女の作品からうかがえる優しくたおやかな感性が生来のものなのか、人生の荒波を超えて身についた強さから来るものなのかわからないが、とても気に入っている。



  【 豆(たね) 〜さやの中にいて豆たちの考えるそれぞれの明日の双葉〜 】

                                 2005年
                                6×27×8
                           木、銀、砂、アクリル樹脂塗装



                【 ありがとうカウンター 】 

                                   2005年
                                 10×10×18
                               布、磁石、わた、鉄



                                    《 遊び方 》 
                                                
                        ありがとうを言ったらぶどうの房を1つのせます   
                                 磁石でくっつきます

                      ↓  

     

                                 《 ルール 》

                        何に対してありがとうなのか言いましょう

                         ↓ 


                                                        
                        20回言えたらぶどうができあがります


          息子が中学1年の時、学校に行けない時期がありました。
          そんな時、学んだり考えていたことを形にしたのが上の2つの作品です。
          10人いれば10とおりの考えや個性を持ったこどもたちがいるというすばらしさ。
          私の作った豆たちはそれぞれに尊い個性豊かな生命を持って芽をだし、やがて可愛い双葉を開かせる。
          小さい命をダメにしないように、ありがとうの気持ちを持つことを忘れないことです。



                 【 たまごちゃん's 】 

                               2006年
                              9×7×7
                          バルサ、銀、アクリル絵具


                         卵には生命の源があります。
                    栄養たっぷりですから、芽がでるにはもってこいです。



                       【 小だるま 】 

                                2006年
                              6,5×6,5×10
                             バルサ、布、石塑粘土


                   コロンとしただるまの形が無性に作りたくなりました。




                 【 パインだるま 】 

                                   2007年
                               60×60×120
                        発泡スチロール、布、わた、石塑粘土、造花


       だるまと何か、と考えた末、全く関係のない果物のパイナップルにだるまの形に納まってもらいました。
       静かな雰囲気の表情を持った人格をそこにつけ加えてみました。




                        【 カエルの布団 】 

                                 2007年
                                8×5×3,5
                            布、わた、レース、染料(顔)


知り合いの主催する企画展のために制作したストラップです。
最初はカールしたまつげに半開きの目、ワンピースにブーツ、とギャルのようないでたちのカエルが出来上がりつつありましたが、手間のかかりそうな衣装が面倒になり、全てを覆い尽くす布団を思いついた時、ニヤリと笑いが込み上げて、即これに決まりました。


 
                           【 カエルの湯 】 

                                    2007年
                                 15×15×20
                           木、銅線、プラスチック玉、色紙、黒マジック


       布団カエルと同じく顔だけで、あとは泡に見立てたプラスチック玉に身体を覆い尽くされたカエルです。
       銭湯の富士山のレトロ感がたまらなく、芝居の背景風に銭湯の気分を出してみました。


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【龍's collection in 速魚川】その6 17:06
40歳を超えた頃から情報誌類は【サライ】、【ナイフマガジン】、【ラピタ】、【BE−PAL】、【モノ・マガジン】などをみるようになった。   いわゆる「大人の少年誌」といわれるマガジンである。   買って来て初めてページを開く時のドキドキ感は現在も変わらない。

先週の土曜日(23日)に大石氏と田邊氏が来店した際、田邊氏が「これは私からのささやかなプレゼントです。」と一冊の本を手渡した。  【ラピタ】だった。    ドキドキ感が甦った。  「この表紙に私の作ったロボットが載ってます。」
創刊当時から定期購読していた【ラピタ】だったが、いつの頃からか遠ざかっていたのだった。

2003年の12月号(下の写真)。  すでにバックナンバーは96をカウントしていた。   飛行機特集・・・・ゼロ戦・・・・よだれが出てめまいがしそうだ。  ゼロ戦は小生の“初恋の人”である。  この表紙に田邊氏のロボット・・・・凄すぎる。



表紙の田邊ロボットのイラストは、イラストレーター・日暮修一氏によるもの。  日暮氏がなぜ田邊氏のロボットをイラストのモチーフに選んだのか?  【ラピタ】の9ページに日暮氏の《表紙の言葉》があったので以下に紹介する。

       気になって仕方がなかった。  住まいから程近いところ、
       たまにクルマで流す道筋に、半年ほど前なにやら面白そうな店ができた。   
       まいったな、と思いながらそこを通るたびに視野の端に捉えるだけにしていた。
       年期のはいった自己防衛本能が警鐘をかきならすのだ。
       立ち寄ったら最後、まずもって確実に嵌(はま)るたぐいの店にちがいない。

       ある日、例によって通り過ぎた際でのチラリをやった。
       視線を感じた。 いったい何だったのだろう。  
       翌週、今度はことさらゆっくりと店の前を走った。  やはり見られている。

       柑子色のエジソン電球にボワッと照らされた大きなロボットの顔が店のガラス越しにこちらを向いていた。
       これであっさり自制は反古となり、店に取り込まれた。 うなった。  予測を超えている。 
       オーナーがヨーロッパを軸足に集めたというアンティークものティントイ、それもずらり逸品揃いの店だった。

       今月のモチーフはそのステンレス製のロボットの顔(オーナー自身のデザインによる新作)と、
       懐かしやPAAの飛行艇“チャイナクリッパー”1936年製の二点セットで決まり。

       描いているうちに子供のころ傾倒していた「小松崎茂」に近づけそうな気がした。  
       そのあいだは少年に戻れたような思いだった。


この日暮氏の文章に出てくる究極の店こそが、有名な【ギィ アンティック ギャラリー青山店】である。  そこのオーナーが山下純弘氏。  金属彫刻家・田邊朗氏のロボット・シリーズをプロデュースしたご本人である。  山下氏との出会いがなければ田邊氏の「ロボット」は生まれていなかっただろう。       糸井重里氏の有名なブログ【ほぼ日刊イトイ新聞】に【ギィ アンティック ギャラリー】が紹介されている。   絶対に行きたい店である。

      ⇒  http://www.guyantique.com/

なお、このコラムに写真添付して紹介した「ロボット」はシリーズのほんの一部である。   アメリカ・ナイキの社長が田邉氏のこれらの作品(ロボット)をすべて買占めたという伝説は有名である。


   上の写真が【ラピタ】の表紙を飾ったイラストのモチーフとなった田邊氏制作のロボット・ランプ。  

24日(日曜)、散人氏が今回の3人の作家を自宅にて夕食に招待してくれた。   散人氏の心のこもった料理に全員が感激。  散人氏から先ほど届いた文章を以下に紹介する。( いつもありがとうございます。)

                       【 田邊氏 】

       先日、猪原氏が芸術家三人を拙宅に連れて来てくれた。
       まぁ、まぁ、一杯で夕食を皆でした。
       中の一人で金属芸術家田辺氏の作品群がコラムに出ている。
       田辺氏のロボットは全てアメリカのナイキ社の社長が買い上げたそうだ。
       偉い!(田辺氏もナイキ社長も)。

       どうも日本人は明治の欧化主義このかた、ルネッサンスの
       ギリシャ回帰の影響で、ギリシャ像が彫刻の美の基本だと
       刷り込まれているらしい。
       が、イギリスのヘンリー・ムーアはマヤ石像等にいたく
       心惹かれ、その単純な美を発見した。
       とすると、やはり田辺氏もギリシャ派でなくマヤ石像派なのであろう。

       これは思想においても、人間は神から選ばれしもの
       という欧州型世界観から、いや裸族は裸族でそれなりに
       調和のとれた生活をしているから、欧州からすると遅れて
       いる、とは云いすぎではないか、という構造主義が20世紀
       中頃から云われ始めた。
       とすると田辺作品も極めて構造主義なのである。

       自由なのである。自由とは、以前の思想や表現規範
       から解かれている、ということである。
       だからナイキ社長は惚れこんだのだ。
       まぁ楽しい一夜であった。



















 
                        田邊朗 作 【 ステンドグラス・ゲート 】


                         田邊朗 作 【 スチール・ボックス 】


                           田邊朗 作 【 リスト・ウォッチ 】



                             【 ウォール・クロック (スチール)】


             上の写真は、左が【王冠ペンダント】、右が【ホースシュー・ペンダント】

ウォールクロック並びにペンダント類に関しては、大分県の株式会社ココナッツワールドにて「タナベアキラブランド」として販売されている。     気に入った方は、以下のサイトを検索してほしい。

     ⇒ http://www.coconutworld.com/column/018/index06.html 
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【龍's collection in 速魚川】その5 16:51

けだるい午後、場末の閑散とした金物店にその人は突然現れた。   霧のかかった意識が急に覚醒する。  夢ではないのに、その人はまるで妖精のような不思議な光を放っていた。

「新春に放映された【カンブリア宮殿】見ました。  感動しました。」と言うのがやっとだった。  その人はC型肝炎など薬害問題の解決に向かって命がけで闘っている国会議員・福田衣里子氏である。   

しばらく店内を見て回った福田氏に【龍's collection in 速魚川】を紹介した。  上の写真は、大石氏の龍の造形の前で。
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【龍's collection in 速魚川】その4 13:54
今回の【龍's collection in 速魚川】に参加した3人の一人である造形作家・吉田明子氏は現在、福岡市中央区の六本松に住んでいる。  六本松といえばあの書家・井上龍一郎氏のホームタウン(縄張り)であり、人形作家・本田宗也氏と時々酔っ払って夜間徘徊しているエリアだ。

同時に、20数年前に今回の作家3人を育てた芸術家・竹崎正憲氏が主宰する「芸大・美大受験/美術研究所【美塾】」のある場所でもある。(美塾:〒810-0044 福岡市中央区六本松2丁目6-6ヒルトップビル3F  092-738−6732 FAX 092-738-6732)  大石順一氏と田邊朗氏も美塾の講師である。  今回のご縁で当店に【美塾】のパンフレットを常置することになった。  【美塾】のコンセプト(基本理念)などを《さわり》だけ以下に紹介する。

              合格だけなら大学を選んでください。

        一流プロを目指すなら予備校を選んでください


           
        一流は大学入学以前の基礎力で決まる

                        石は誰が磨いても光ります

                宝石を磨くには技術が必要です

                 ダイヤモンドの原石を磨くには

               知識と経験と最高の技術が必要です

                  最初の削り方が悪いと

                   どんなに良い宝石も

                   価値が上がりません

                    将来を見据えた

                  基礎力指導は美塾だけ


         基礎がいかに大切なモノかはあまり語られません。
       あなたの将来は大学だけで決まるのではありません。
       大学4年間で相当の実力差が生まれている事を知らねばなりません。
       その原因が「基礎力」なのです。
       ちゃんとした本当の基礎力を持たない者は、大学に入学して
       「何をどのように勉強すれば良いのか・・・・」も判らない為に
       ただ与えられた課題をこなす・・・・だけに留まり、何の進展も展開もなく
       消化したつもりで4年間を過ごす事になるのです。
       造形・美術の基礎は「一通りやれば良い・・・・」は間違いです。
       「理解できていなければ誤解している」という事です。
       ましてや、受験の対策ばかりやっている等は、とんでもない事です。
       合格ならどこからでも合格は可能です。
       極端な言い方をすれば本人のやる気だけでも合格は可能。
       ただ合格で良ければ・・・・の話ですが・・・・。
       本当の勝負は社会に出てからではないですか?
       その為には中身のある良い合格をしなければ大学4年間は「身」になりません。

  デザインは他の美術専攻とは訳が違います。 卒業したら即プロです。

       ゆえに大学に入る前が一番重要です。  是非、説明を聞きに来てください。



上の写真は造形作家・吉田明子氏が今回の作品展の為に制作した「まるバッグ(エコバッグ)」のデザイン。   「キュート!」、「カワイイ!」・・・女性の来店客がこのデザインを見て最初に発する言葉である。   見る人の心を暖かくするほのぼのとしたデザインであるが、抜群のバランス構成である。

吉田氏は美塾で基礎力を磨いた後、武蔵野美術大学・工芸工業デザイン科を卒業している。  大石氏と全く同じ進路である。  従って大石氏や田邊氏と同様に、デザインだけでなく立体造形などあらゆるジャンルをこなすことも出来るのだ。



吉田氏プロデュースのエコバッグ「まるバッグ」は布地が黒と茶の2色。   布地を裁断してシルクスクリーンで一枚ずつ手作業で印刷し、縫製して作り上げる。   従って、このバックの形状も吉田氏のオリジナルということになる。

すべての工程を吉田氏一人の手作業でこなすので、大量生産は不可能である。   逆に「このデザインを○○色のポロシャツの胸の部分にお願いします。  ポロシャツのサイズはLで。」とオーダーできるので、自分だけのオンリーワンのポロシャツ(Tシャツ、エコバッグなど)を手に入れることもできる。

                     吉田明子作 【 まるバッグ 】 各色  1900円 (税込み)





上の写真も今回の作品展の為に制作した吉田氏のオリジナルデザイン。   これほど極端に異なる三者三様の「龍」はないとさえ思える。  しかもそのそれぞれが個性的でオリジナリティーにあふれている。


                       吉田明子作 【 ベビーTシャツ 】 各色 1500円 (税込み)




           吉田明子作 【 メガネのうし君 エコバッグ 】  各色  2000円 (税込み)




   吉田明子のホームページ ⇒ http://www16.ocn.ne.jp/~akarui/


上の写真は、右から造形作家・吉田明子、金属彫刻家・田邊朗、作陶家・大石順一。    テキスタイル(布地)、金属、土と素材も表現も全く異なる3人の作家が一枚の写真に納まった。   【美塾】が縁となった20数年ぶりの同窓会である。
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【龍's collection in 速魚川】その3 11:58
大石順一氏プロデュースの【龍's collection in 速魚川】は、1月10日から31日まで、金物店内の一角で「さりげなく」開催されている。  作品展の広報もせず、来店客の様子を見て店主が「さりげなく」誘導するというスタイルである。

大石順一氏も田邊朗氏も吉田明子氏も「自然体」の雰囲気を身につけている作家なので、縁のある人に鑑賞していただければそれでいいという気になってしまう。  作品の設営も三人で楽しみながら仲良く自由に作業している、という感じだった。



コラムの【龍's collection in 速魚川】その1で紹介した「龍」の造形の第二作目が間に合った(写真)。
二作目は天に駆け昇ろうとしている「立ち龍」である。   この作品のタイトルは【 series   PRAY(祈り) 2 】
【 series   PRAY(祈り) 1 】と二体が並んで展示されることになった。  サイズは小さいが凄い迫力である。   
「シリーズ」と銘打ったのは、今後3,4,5・・・と異なる龍を制作していくという大石氏の決意を意味する。



10日初日の朝に「さきほど、速魚川にこの龍を入れて携帯電話で写真を撮って遊んでみました。  川から昇ろうとする龍のジオラマみたいに写らないかなぁと思いまして」と大石氏が言った。   早速後日、来店していた川遊びの会・才籐氏の協力を得て速魚川に【 series   PRAY(祈り) 2 】を入れて撮影してみた(写真)。

水面に龍の影が写るように狙ってみたが、いまいちか・・・・作品にもしもの事があったらどうしようという不安が頭をよぎった。   何枚か撮ってすぐにもとあった展示位置に戻した。  ヨイコハケッシテマネヲシナイヨウニ、です。



【 series   PRAY(祈り) 1 】と比べて明らかに表情が異なっている。   天に昇ろうとする時の「龍」の思いが感じられると同時に、頭部全体も若干長く流線型になっておりスピード感が漂っている。     
「前作の眼の瞳はハニーブラウンでしたが、今回は赤を使いました。」と大石氏が言った。  静なる茶色から躍動の赤へ、という意味か?   眼の虹彩(こうさい)に使用されている眼の覚めるような鮮やかなブルーは、ヨーロッパから手に入れた顔料を使っているそうだ。

粘土の龍が完成すると時間をかけて自然乾燥させる。  乾燥したら窯で素焼きをし、彩色して再び窯で本焼きする。  陶器と同じ工程である。   この1200℃の窯焚きによって「龍」は、経年変化をしない半永久的な命を吹き込まれる。






上の写真は大石氏の遊び心が伝わってくるコーヒーカップセット。  土蔵造りの町の上空にユーモラスな龍が飛翔しているシーンである。   筆一本でサッサッと描かれているように見えるが、シンプルで全く無駄のない線描は見事である。   優しく暖かい雰囲気の中にフフッと笑いがこみ上げてくる。   限定5セットを展示。

                      【 龍、あらわる 】  (カップ&ソーサー)

                          一組 3500円 (税込み)



以前から、陶箱(とうばこ)の構想は大石氏から聞いていた。  下絵のデッサンも見せてもらっていたので、作品が出来るのを楽しみにしていた。   そして今回の作品展でやっと出会えた。   まるで青白く光る宝箱だ。

陶芸の世界では「染め付け」と呼ばれ、【作陶】と【絵付け】は彫刻家と画家が異なるジャンルであるように分業になるのだ。  その両方をできる作家は少ない。   呉須(ごす・コバルト顔料・青色系)を用いて、細い筆で器などに絵を描く「絵描き」や、太い筆を絞りながら面で描いていく「濃(だみ)」という手法などがあるという。

写真の作品は「染め付け」の施された陶箱。   春の到来を感じる繊細で幻想的な作品である。   呉須の深いブルーが心を和ませる。  サイズは、幅80mm × 長さ200mm × 高さ45mm。 

                     大石順一作 陶箱 【 瑞雲・山桜・花吹雪 】

                             25000円 (税込み)  





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【龍's collection in 速魚川】その2 13:39
金属彫刻家・田邊朗(たなべ・あきら)氏のホームページは先日のコラムで紹介したが、直接会ってみると人物としての魅力に引き込まれてしまう。   物静かな雰囲気ではあるが、気さくで優しく芸術家特有の豊かな感性が会話の中ににじみ出てくる。

彼が鉄と格闘している制作現場を見たことはないが、指に残る鉄粉や火傷の痕がその現場の激しさを物語っていた。  「現在のようにパソコンで設計してマシーンを使って制作するようになる以前の最後の世代です。」と語るように、手道具で作品を作る事にこだわりを持っている作家である。



        
上の作品は、「龍鱗 機廚鮴作するための下絵あるいは素描(デッサン)である。  素描自体がぞくぞくするほど魅力的な作品になっている。   図面を観察すると、この作品が6個の異なる直径の円を基準に制作される事がわかる。

                         【 ドローイング 龍鱗 機 

                         木炭紙インクジェットプリント
                             ペン 水彩
                             W210×L297 
                          ¥30,000  (額 別売り)

                         A4サイズ スチールフレーム
                          参考価格 ¥30,000



「鉄」という素材に心を奪われた作家や職人は日本人にも多い。  「くろがね」とも読むこの金属は、人間の生活には欠かせないものだが、美を表現する素材としても多くの魅力を持っている。  鉄の皮膚(表面)ほどその表情のバラエティーさに富んだ金属はないのではなかろうか? 

田邊氏の作品群を彼のホームページで見てみると、「言語で表現できない要素を彫刻で表現する」という基本的なものを感じる。  「龍」のイメージを田邊氏の鉄で表現すると上の作品になる。  表面を油焼き処理することで重層感や存在感が出ており、計算された全体のうねりには「龍」の躍動感とエネルギーが漂っている。

                              【 龍鱗 機 

                         材質 油焼きされたスチール
                         W245×L500×H140(mm)

                              ¥250,000 



                              【 龍鱗 供 

                         材質 油焼きされたスチール
                         W245×L500×H140(mm)

                             ¥250,000


                                 店内の展示風景


                         【 The form on a chest 】

                         材質  磨かれたアルミニウム

                              ¥150,000


                       壁面への構成 【 赤鱗 】

                      材質  磨かれたアルミニウム
                       W150×L260×D20(mm)

                           ¥50,000



   田邊朗のホームページ ⇒ http://w01.tp1.jp/~a311526262/

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