猪原金物店・コラム明治10年に創業。九州で2番目に歴史の金物屋。
金物店の裏では喫茶店も営業しています。

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【木工作家・鬼塚聖貴】その2 18:40
風薫る5月になった。世間はゴールデン・ウィークの民族大移動が展開しているが、当店は5月1日(第一水曜日)に連休の中休みをとることにした。インドから帰って来た南島原市加津佐(かづさ)町在住の門畑賢一郎氏と島原市在住の高瀬あいこ女史を伴い、雲仙市国見町の木工作家・鬼塚聖貴氏の工房を訪問した。

新緑が森全体を覆い始めて自然の息吹を一番感じる時期である。雲一つない晴天でいい風が吹いていた。先月、門畑氏の案内で加津佐のキリシタン墓碑を訪ねた際、フッと門畑氏を鬼塚聖貴氏に引き合わせたい衝動に駆られたのだ。昨年6月に完成した有田の造形作家・大石順一氏による木彫『神農(しんのう)』像の台座を制作している鬼塚氏の進行状況が気になってもいた。 ★ここをクリック ⇒ http://blog.inohara.jp/?cid=39683



広域農道(通称:グリーンロード)を島原方面から車で十数分も走ると道路右手(海側)に各種コンテナーが積んである販売所があり、それを100mほど過ぎた交差点(山の上神社)を左(山側)に折れて一本道を1キロほど走ると木立の三叉路にぶつかる。その真ん中の道を数百メートル進み、なだらかな坂道を下った終点にある湖のように美しい堤(ため池)の畔にオニヅカ工作所がある

到着すると木槌の音がした。ハワイから帰ってきたばかりという女性がハワイから持ち帰った珍しい木の板にノミを当てていた。それから数分もしないうちに長崎から2名の男性が到着し「イスの木」で箸を作り始めた。木工教室の日だったのだろうが、皆さん黙々と思い思いの木工作業をしている。鬼塚氏は時々説明や指導をするだけで、あとは自分の好きなようにさせている彼は自分自身同様に決して他人をコントロールすることはない

二匹の放し飼いされたおとなしい犬が時々すり寄ってくる。理想的な空間と静かに流れる時間。鬼塚聖貴氏の想念がそのままこの現実を作っているようだ。我々同様、この場所と鬼塚氏に魅かれて集まるファンは多い。




訪れるたびに素敵に変貌を遂げていく工房。数年前は壁板や窓もなく、吹きさらしの家畜小屋だったとは誰も信じないだろう。雨露忍べて木工ができればよし、と薪ストーブだけ置いてあった工房がいつの間にか夢のような空間になった。その入り口近くに『神農』の制作中の台座があった

「クライアントの織田さんから栗の木を指定されましたが、神農が鎮座するような大きな栗の木はそんなにないんです。ところが運よく立ち枯れ状態の栗の木がありました。生きてる木を伐採したくなかったので非常に幸運でした。」と入手できた経緯を鬼塚氏が説明した

素材の栗の木を精霊が棲むというガジュマルのイメージでどのように彫っていくのか? まだ丸太状態の時、構想がなかなか浮かんでこないという鬼塚氏に「神農は大地に鎮座していた。その地下からガジュマルの木が芽吹き、神農を天まで持ち上げようと必死でうねりながら力を出している、という過程を表現したらどうかなぁ?」フッと脳裏に浮かんできたフレーズを無責任にも伝えたのだった

上と下の写真でわかる通り、台座はまだ着工したばかりの状態。「彫っていきながら自分の中でどんどんイメージが変化していくのが面白いんです」と鬼塚氏が呟いた。あと半月ほどかかるらしいが完成が楽しみだ。




 
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【木工作家・鬼塚聖貴】その1 16:15
昨日の午後に、東京の【ギィ・アンティックギャラリー】の山下純弘氏から電話があった。 来月9日から17日まで開催予定の「第二回・サヴィニャック展 in 速魚川」の件だったが、「ところで鬼塚さんはお元気ですか? 今年もイベントで会えますかね?」「もちろん、彼も楽しみにしているようですよ。 初日(9日・土曜)のトークショーの交流会ではまた歌ってくれるそうです。」「うわ〜、それは楽しみだなぁ!」

そんな会話をした翌日の本日11時頃、その鬼塚氏が彼の手作りの『リュート』を手に持ちひょっこりと来店した(下の写真)。 「島原半島で取れた自然木をくり抜いて作りました。 リュートの本体は山桜で天板はミズメ、糸巻きなどは杵木(いすのき)を使っています。 弦は絹の弦です。」と説明してくれた。 「へぇ〜、どんな音色?」と催促すると、リュートをほぼ横向きに身体に当て軽く爪弾いてくれた。

なんともいえない素朴で優しく懐かしい音色だった。 フラメンコギターを激しく掻き鳴らし情熱的に歌唱する時の鬼塚氏とはまるで別人のようだ。 写真でもわかるように鬼塚氏はサウスポーである。 ギターを弾いた経験のある人は、彼のギターの太い弦と細い弦が逆に張ってあることに少し違和感を覚えるかも知れない。 





鬼塚氏の作る椅子やテーブル、スプーンや楽器にいたるまで、表面の仕上げは鑿(のみ)や槍鉋や小刀など刃物のタッチを残してあるのが特徴。 昔、ウッドカービングにはまった経験があるので、堅い木を削る時の苦労は想像できる。 すぐに刃物が切れなくなるので頻繁に研ぐ手間は半端ではない。 そんな苦労した刃物のタッチをペーパー仕上げなどで消してしまうのは確かにもったいない。 刃物の痕跡を残す事で、機械仕上げでは不可能な人の手の温もりとメイキングの物語が反映持続していくのである。  



上の写真は、鬼塚氏による自然木の椅子。 雲仙市吾妻町平木場で採れた杵木(いすのき)が材料になっているそうで、椅子の背もたれの部分に趣向が凝らしてある。 四つの円形の埋め込み部分の説明をしてくれた。 使用された木と埋め込まれた石は上から順番に、紅タブの木にアメジスト。 合歓木(ねむのき)にターコイズ。 山桜にマラカイト。 栗の木にオレンジ・カルサイト。  ・・・・鬼塚氏によって何か深い意味が込められていると思われる。  
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