猪原金物店・コラム明治10年に創業。九州で2番目に歴史の金物屋。
金物店の裏では喫茶店も営業しています。

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のぞみ川のオブジェ・4 14:19
松下氏と野島氏から「明朝の8時にオブジェをのぞみ川に設置します。」と電話をもらった。

 翌朝8時前にデジタルカメラを持って松下ひふ科に行くと、院長の松下氏がのぞみ川の魚達を観察しながら、オブジェの到着を待っていた。    オブジェの設置される予定の地面部分は、今まで植えられていた花類が除かれちゃんと整地されていた。

 しばらくすると野島氏や字を彫ってくれた石材店のスタッフ数名がオブジェを載せた軽トラックで到着した。    オブジェの重量は100kgほどらしい。    井上氏の書「のぞみ川」が野島氏のオブジェに見事に掘り込まれており、二次元(平面)の作品と三次元(立体)の作品のコラボレーションが成功することを証明していた。

 定位置に収まったオブジェは、優しく控えめにそして鋼鉄のようなしっかりした輪郭をもって観る者に語りかけてくるようだ。    「のぞみ川」や「ほたる川」や「速魚川」は確かに民間人が造ったちっぽけな川である。      しかし、それらに込められた熱い想いと鋼鉄の決意は、21世紀の日本人の進むべき方向の一端を担うような予感がするのだ。    以前コラムで紹介した石原吉郎の詩「花であること」を再度添付する。

   花であること         石原吉郎

    花であることでしか
    拮抗できない外部というものが
    なければならぬ
    花におしかぶさる重みを
    花のかたちのまま
    おしかえす

    そのとき花であることは
    もはやひとつの宣言である

    ひとつの花でしか
    ありえぬ日々をこえて
    花でしかついにありえぬために
    花の周辺は的確にめざめ
    花の輪郭は
    鋼鉄のようでなければならぬ
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のぞみ川のオブジェ・3 14:17
「のぞみ川」・・・・松下氏がこの名前を決定した時、まわりに多くのアドバイザー達がいた。    速魚川での宴席だった。     「のぞみ川」の「のぞみ」とは島原の明るい未来への希望(のぞみ)という想いからつけられたと聞いている。

 井上氏の書(添付写真)は、その想いを充分に表現している。    島原の未来を自然のせせらぎの創出や文化芸術振興、島原らしい景観形成などに託すというスタンスは21世紀型の発想である。 

 先日、高城氏が島原新聞に投稿し紹介した「日本21世紀ビジョン(内閣府編)」という本(5月9日発行)の重点項目の中に、「造らない公共事業(!?)」の推進という項目があった。   

 これは今までの公共投資重点主義から、既存ストックを活かした「コンパクトで緑とオープンスペースが豊かな集約・修復保存型都市構造」を促進し、生活・環境・産業のバランスがとれた「調和のとれたまち」の実現を目指す。  それが「造らない公共事業」である。    

 そしてなにより「文化資本の形成」が大切とある。    過去の高度成長期のように公共事業主体で文化や地域を振興してきた時代には、需要や雇用を生み出す「利用価値」が重視されていた。    しかし今後は、文化資本や自然環境のように、存在すること自体に価値があるとか、後の世代に残すことに価値があるといった「非利用価値」を適正に評価しなければならない。 ・・・・と明記してあった。

 島原の湧水を利用して民間人が「のぞみ川」を造った。   その川には自然環境の復元を目指したビオトープの概念や「鏝絵」、地元彫刻家と福岡の書道家の合作である石のオブジェなど多くの要素が込められている。    「日本21世紀ビジョン」に関する専門調査会を設けた経済財政諮問会議の国内トップのシンクタンク達が、「のぞみ川」の一連のストーリーを見た時、何と言うだろうか?・・・・
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のぞみ川のオブジェ・2 14:16
井上龍一郎氏が「のぞみ川」の書を持って福岡からやって来た。    17日の午後12時半に野島氏のアトリエに井上氏、松下氏、野島氏の3人が集合し、オブジェと書を照合して検討した。(添付写真)

 小生は現場に行けなかったが、カメラマンの大崎氏が記録写真の撮影を快諾してくれた。  オブジェを前にしたオーナーと彫刻家と書道家の真剣な表情は、臨場感がひしひしと伝わってきてひとつの絵になる。    三人とも目の前にあるオブジェの向こうに島原の未来を真剣に見つめているようだ・・・・・ 

 井上氏の書を、オブジェのどの部分に彫るのか?・・・・作品の成否を決定する重要な場面である。    それぞれの持っているイメージを一致させ納得させるために、実際の照合作業をしながら多くの話し合いがされたことは想像に難くない。
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のぞみ川のオブジェ・1 14:13
野島泉里氏が当店を訪れ、「松下ひふ科の、のぞみ川のオブジェが完成しました。  字を書いてくださる井上先生に連絡をしたいのですが・・・」と言った。    二人のコラボレーションは松下先生のアイデアだった。

 早速、野島氏のアトリエに向かい、完成したオブジェを撮影した。(添付写真)

 島原石(安山岩)を素材にしてあり、色はアズキ色に近い。   正面から見るとシンメトリー(左右対称)ではなく、側面とともに微妙な形状の変化に妙味が出ており、野島氏の「のぞみ川」への想いが込められている。

 縦と横の長さが約40センチのサイズは、のぞみ川を観察した野島氏が出した結論だった。    すぐに福岡の書道家・井上龍一郎氏に電話を入れ「40センチ四方に収まる字を書いてください」と言った。    井上氏はすでに「のぞみ川」の字をかなりの枚数書き込み、ほぼイメージを完成させていた。
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【松下ひふ科のビオ・トープ】その14 14:10
松下ひふ科のビオ・トープも完成して、いよいよ世間にデビューすることになった。

 まず、地元ケーブルテレビ・「カボチャテレビ」の佐藤栄里子氏に電話し、取材してもらうように頼んだ。    地元新聞社・「島原新聞」の記者と一緒にすぐに取材に来てくれた。

 松下先生から、「今日のカボチャテレビで、未来塾の筑紫哲也氏の講演と、のぞみ川が同時に放送されます。  是非見てください。」と電話があった。      しまばら未来塾で【総論】を仕掛け、のぞみ川で【各論】を実践し、テレビや新聞などのメディアを使って、県内や島原半島中に【情報発信】するという理想的なパターンが実現する。    これで、連鎖反応が発生するという予感がしてきて、感動した。

 夜、たまたま来店していたしまばら未来塾の顧問・高城氏と運営統括・島崎氏の三人で、ケーブルテレビのそのふたつの番組を観ることになった。     筑紫哲也氏の講演風景が終わり、いよいよ「松下ひふ科ビオトープ」が画面に出てきた。    佐藤栄里子氏のカメラワークは最近ますます巧みになってきた。     長さ9.2m、幅1mの「のぞみ川」が、カメラアングルで表情をどんどん変える。   【小宇宙】を見事に表現していた。

 松下泰三院長本人が仕事用の白衣を着たまま、のぞみ川の説明をしていく。      松下氏はもともとアナウンサーのようないい声をしているので、説得力がある。    のぞみ川のビオトープのシステムを、例を挙げながら分かり易く説明していたが、一番深い「よどみ」の部分から次第に浅くなる部分の浅瀬を、めだかなど魚達の産卵再生箇所、つまり「諫早湾」と表現したところは特に説得力があった。    この人も只者じゃない。

 添付写真は、島原新聞の紹介記事である。    のぞみ川にたたずんで微笑んでいる女性は、松下氏の母上である。    物静かで優しい女性であるが、いろんなボランティアや習い事を精力的に実践している活動家だ。    のぞみ川の誕生を一番喜んでくれた人でもある。
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【松下ひふ科のビオ・トープ】その13 14:08
長さ約10m、幅約1mの何の変哲もない花壇に「小宇宙」を作ろうという夢がやっと実現した。

 添付写真のせせらぎは、もうすでに多くの生物が棲むビオ・トープである。   「のぞみ川」と銘々された水路に、有明町のきれいな川から多くの土砂が移設された。  この土砂にはホタルの餌になるカワニナや数え切れない種類の微生物、バクテリアが含まれている。

 オーナーの松下氏、設計者の小松氏、施工者の佐仲氏、協力者で「川遊びの会」の才籐氏など多くの人間の想いが、この川を作ったのだ。    「のぞみ川」には、ハヤやエビ、ドンコ、ヤゴ、カワニナなどの大きな生物も棲んでいる。

 近づくと、せせらぎの音がチョロチョロと聞こえ、眼を閉じているだけでも癒される。     澄んだ水の脇にはクレソンやカラー、石菖、藻などが植えられ、時間の経過と共に風景になじんでいくはずだ。      せせらぎは5段になっており、最上流からあふれた水が段々に音を立てながら流下していく構造になっている。         最下流は深く、ハヤなどの大きな生物が棲むのに都合よくしてあり、大きな石から小石、砂利、砂、泥などで構成される。

 あとは、植生や水質が安定してきた5月頃、つまりホタルが飛ぶ時期に、ホタルのオスとメスを捕獲し、交尾、産卵、孵化させ、幼虫を「のぞみ川」に放流すれば、来年の5月にはホタルが飛ぶことになる。    5月が楽しみだ。
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【松下ひふ科のビオ・トープ】その12 14:06
コンクリートから出る灰汁(あく)は馬鹿にできない。    強度のアルカリ性であり、工事の終わった現場などの水溜りに飛び込んだカエルが、ひっくり返って腹を見せ死んでいるのを見ることがある。

 セメントを触ったことのある人は分かるだろうが、ちゃんと水洗いをしないと皮膚が赤くただれ、薄皮がはがれたりする。  従って、十分に「灰汁抜き」をしておかないと、入れた生物達は死んでしまうことになる。

 ビオ・トープ、つまり生物達を入れる前に、せせらぎに水を満たし十分にコンクリートの灰汁を抜く事にした。     毎分150リットルの水が供給されている速魚川でさえ、最初から入れていたハヤの成魚が一ヵ月後にみんな死んでしまった。    ハヤの皮膚が白く変化して、ほぼ同じ日に死んでしまった教訓がある。    その後に入れたハヤは元気に育ち、すぐに産卵を始め、川を作った年に数百匹に増えることになった。

 左官の佐仲氏に聞いたら、速魚川の教訓から、最後の仕上げに塗ったモルタルには中和剤を加えたので、そんなに心配することはないとのことだった。    一日でも早く灰汁が抜けることをみんなで願った。

 添付写真は、せせらぎに水をどんどん流しているところ。   植生を植え込むまでもう少し・・・・ 

 川の名前は?・・・・・    26日の井上龍一郎氏の壮行会の会場で、「のぞみ川」と決定した。     オーナーの松下泰三先生が、その場にいた皆さんの意見を聞きながら、自ら名前を決めたそうだ。      「のぞみ川」・・・・いい名前だ。    島原が湧き水をこのように有効利用して自然を取り込んだ素敵なまちに変わって欲しいという希望を託してつけられた名前である。
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【松下ひふ科のビオ・トープ】その11 14:03
ほぼ工事は完成した。    湧き水の給水箇所や排水箇所も配管工事は終了し、準備は整った。 

 しかし、「ビオ・トープ」の仕掛けは今からである。    パソコンで言えば、ハード部分が完成し、いよいよそれを作動させるソフトをインストールする直前の段階である。

 「ビオ・トープって何?」と聞かれることが多い。    語源はギリシャ語のバイオ(生物)とトップ(場所)の合成語である。  呼び方はドイツ語のBIOTOP(ビオトープ)からきており、野生生物の生息場所、あるいはある程度の景観的なまとまりを持ち、野生生物が十分に生息できる空間を意味する。

 ビオ・トープの概念は、生物達の生態系が存在する自然環境を保護保全したり、新たにそのような環境を人工的に造り出そうとする運動をも含めた広い意味を持つ。
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【松下ひふ科のビオ・トープ】その10 14:00
仕事がすごいスピードで進んでいく。    防水剤を2度塗りし、ラスを貼った後、防水モルタルを全体に塗り込んで、いよいよ石積みが始まった。

 「石と石の目地(すきま)は空けるように」がコンセプト(基本理念)である。

 残念ながら、せっかく「せせらぎ」を造っても、石を積む時、強度ばかりを優先させて隙間をすべてモルタルで埋めてしまう工事がほとんどなのだ。    これでは、まったく意味がなくなる。    いわゆる、視覚効果だけの自己満足的なせせらぎになってしまう。     よく考えて欲しい、そもそも石積みの醍醐味は目地の空き具合を楽しむためのものなのだ。    そこで職人の技が試される。

 例えば、砂漠のど真ん中に神様が町を造ってくれたとする。    人間は大喜びし、それぞれ与えられた家に入ろうとすると、玄関や窓などのすべてがコンクリートで塗り固められており、入れない。     果たして、無人の奇妙な街が残される。   それとまったく同じことなのだ。

 佐仲氏は基本理念を理解しているので、見事に石の目地を開けながらモルタルで石を積んでいく。    一番上の天場の石だけは、子供などが乗ることを想定して、安全を優先させ、目地も空けずしっかりモルタルで固定していく。
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【松下ひふ科のビオ・トープ】その9 14:00
コンクリートが乾いたので、いよいよ防水加工が始まった。    コンクリートの壁面に防水剤を塗り、乾いたらもう一度塗るという念の入れようだ。     

 添付写真を見たら分かると思うが、グレーの光沢のある部分が防水剤である。   二度塗りが終わるとすぐに「ラス」という鉄製のネット(金網)を壁面に張っていく。  ラスを壁面にあわせてそれぞれに切って貼っていくのだが、壁から剥離(はくり)しないように板や木で突っ張って抑える。     抑えた後に、シリコン剤という接着剤の一種で「点付け」して壁面とラスを一体化させる。

 なぜ壁面にラスを張るのかといえば、この後の工程である防水モルタルを塗る時の食いつきを良くするためである。    そのまま塗ってもいいが、モルタル自体や側面につける石などの重量で壁面から剥離(はがれる)しやすくなるので【仕事は堅く】を選択したらしい。   「いい仕事をしてますねぇ」とお宝鑑定の中島先生にほめられそうだ。
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